東亜総研月例セミナー報告-平成26年6月11日(水)

平成26年6月11日(水)第6回月例セミナーを開催しました。講師は、前アメリカ合衆国駐箚特命全権大使の藤崎一郎氏、「国際情勢の読み方」についてご講演をいただきました。

講演は、軽妙な三択クイズで始まりました。①日本の子供が大好きな食べ物・カレーの種類で、米国大統領の名前にもあるものは?②米国の国の花は?③オバマ大統領の上院議員時代の選出州は?④オバマ大統領は犬と猫を飼っているが、二匹目の猫の名前は?⑤映画「風と共に去りぬ」の最後のシーンで、スカーレット役の主演のヴィヴィアン・リーが「タラが残っている」と語りますが、この架空の故郷の「タラ(農園)」はどこの州にあったでしょうか?⑥現職の米国大統領として、初の海外訪問国が日本であった大統領は?⑦暗殺されていない大統領は?⑧日米を最初につないだ「ジョン万次郎」の出身県は?⑧全米最大面積の州は?⑨米国大統領に就任後、ホワイトハウスへの初の訪問客として、日本の総理大臣を招いてくれたのは? 以上の10問です。当日の参加者で、もっとも正解数が多かったのは経済評論家の久水宏之氏。藤崎一郎講師からオバマ大統領就任記念式典のメダルが贈呈されました。

藤崎一郎氏は、駐米日本大使在任中の業務に触れ、①日米二国間の交渉 ②米国内政のフォロー ③米国に対する日本の政治・政策などの米国側への説明 ④国際情勢に関する動き・情勢などに対する米国の考え方の理解、の4つを挙げ、最も大切な仕事は第4番目と述懐しました。

そして国際情勢の読み方のエレメント(要素)として、①心理(学説・理論ではない心の動き) ②力 ③時間を挙げました。

「心理」では北朝鮮情勢に触れ、安全保障の選択肢として①戦争オプション、②融和路線、③現状維持。また経済政策の選択肢としてとして、①サンタクロース型分配、②経済開国、③現状維持を挙げ、指導者・指導部・国民の心理・立場に自分を置き考えれば、「祖父や父が行ってきた指導方針をなぞるのではないか」、との見通しを示しました。

また中国に関しては、「心理」で考えれば、社会主義を実現するための中国共産党による現在の体制を維持するという点に関しては、改革派も保守派も変わらないと述べました。

「力」については、「歴史を見ても、『力は使われるためにある』。この点は何ら変わっていない」とし、1983年のソ連空軍機による大韓航空機撃墜事件や中国軍事予算問題を例に挙げました。米中関係については、2013年米カリフォルニア州サニーバレーでの習・オバマ会談を例に、米中関係で考慮すべきマイナス要素として、軍事膨張、人権問題、台湾問題、法の支配を、プラス要素として経済の相互依存、国連での協力関係などを挙げ、「振り子のようなもので行ったり来たりする」として、加熱する報道姿勢に疑問を呈しました。

「時間」に関しては、国家間の交渉には「時間」が大きな意味を持つとし、「早くまとめようとしているか(一般型)、任期中に成果を出そうとするか(トップ型)等ある。社会主義国家に関していえば、政権存続しか頭にないことを銘記すべき」としました。

次いで、会場からの質問に答え、「現下の中越海上の紛争について」は、「両国とも世論がないので、頑張ろうとするとどこまでも頑張れる。今のところどちらも矛を収める気がない。習政権は周辺諸国とすべてぶつかっており、やりすぎと思う。日本は譲らず、油断せず、挑発せず、だ。」とした。

白熱月例セミナー「譲らず、油断せず、挑発せず」藤崎一郎氏

白熱月例セミナー「譲らず、油断せず、挑発せず」藤崎一郎氏

また、「自由主義貿易体制について」では、1948年発効の「GATT」協議以降、最恵国待遇と自由貿易協定という例外を認めたことが、現在では例外が一般的となり、自由貿易体制は選択的になったと回答。また「2期目のオバマ政権について」は、「過去の米政権の常として、外交での得点を狙う。中東又は北朝鮮問題に出てくる」と予測。日中問題については、「中国との関係は尖閣のみではない。いつでも会談しますよ、という現首相のスタンスは正しい。この70年の日本外交はそう間違ってはいなかったのではないか。尖閣問題で米国の姿勢(日本を守ってくれるのか)に疑問を持つ論評もあるが、シリアやウクライナと米国との間に条約はない(日米間には存在する)。チワワであっても、猛犬注意と示す。それどころか米国はドーベルマンだ。『譲らず、油断せず、挑発せず』。」と講演を締めくくられました。

⇒講演録の全文はコチラ 第6回月例セミナー講演録