■東亜総研創立10周年記念フォーラムを開催
来賓の駐日ベトナム大使、駐日モンゴル大使ら300人が出席
公益財団法人「東亜総研」(武部勤代表理事会長=写真)は6月26日、東京都千代田区のザ・キャピトルホテル東急で創立10周年記念フォーラムを開催しました。フォーラムには北海道をはじめ全国各地から約300人が出席しました。
冒頭、総合司会の上山茂生代表理事専務がファム・クアン・ヒエウ・駐日ベトナム社会主義共和国大使、グエン・ドゥク・ミン・同公使参事官、ダンバダルジャー・バッチジャルガル・駐日モンゴル国大使ら来賓の方々を紹介しました。
長澤理事長「これから10年、武部会長がまいた種を芽吹かせるために努力」
開会の挨拶で長澤薫代表理事理事長が「会長である武部勤は『日本はアジアの一員であり、アジアの安定は世界の平和につながる』との考えのもと、2013年6月に当財団を設立し、人づくりは国づくりの精神で日越大学構想や技能実習生受入れなどに取り組んできました。この間、受入れ企業、送出し機関、国、地域の皆様と協力して何とか乗り越えてまいりました。大きな夢を抱き、日本にあこがれて日本を目指して来たアジアからの若者たちの夢を形にできるお手伝いができるなら、これこそ私たちの天職と思って精一杯努めさせていただいております」と語りました。さらに長澤理事長=写真=は「私たち兄弟は幼い頃より『国やふるさとを守ることは家族を守ることと同じなのだよ』と命を削るように働いてきた父、武部勤の姿を見て育ちました。今は人材育成、国際交流を通してアジアの安定に努めることこそがふるさとや家族を守ることであると感じております。これからの10年を考えるとき、武部がまいてきた多くの種を芽吹かせるために皆様のご支援ご指導をいただきながら一層努力をしていく所存です」と述べました。
岸田首相 ビデオメッセージ「政府として日越大学の発展を引き続き支援」
来賓挨拶では岸田文雄首相がビデオメッセージ=写真=で「武部会長は議員引退後に東亜総研を設立され、民間の立場からアジア諸国との協力関係づくりに取り組んでこられました。その慧眼(けいがん)と情熱に深く敬意を表します。その具体例が、武部会長がライフワークとしてその発展に尽力されている日越大学です。同学は2016年の開学以来、将来の日越の架け橋となる人材を育成することを目指し、ベトナムの重要な人材供給の役割を果たしてきています。先月のG7広島サミットの際に開いた日越首脳会談においても、チン首相との間で、同学の発展に向け引き続き連携していくことを確認しました。政府として引き続き日越大学の発展を支援してまいります。武部会長が共同実行委員長を務めるジャパンベトナムフェスティバルは、ベトナムにおける最大の日本文化発信イベントとして定着し、本年は北海道フェスティバルinハロンも開催されると伺っています。今後も様々な分野で東亜総研がその力を存分に発揮されることを期待します」と話しました。
二階日越議連会長「日本の新たなる開国を求めて頑張る姿に声援」
続いて、来賓の二階俊博・日越友好議員連盟会長(衆議院議員)=写真=が「武部会長が(衆議院議員を引退後に)東亜総研を設立して10年にわたって活躍している。これは普通のことではない。やはり生き様として10年ご活躍していることに友人として深く敬意を表すとともに、これからの一層のご活躍にさらなる期待を寄せている。武部会長は常に世界を見て、アジアを見て、そして我が国の将来を考えてきた。政治家として大変重要な視点からこの世界、社会、地域を眺めてきた。それだけに我々は日頃から心から敬意を表すとともに、その大いなる活躍に期待を寄せるものであります。皆さん、これからも武部会長がさらに日本の躍進のために日本の新たなる開国を求めて頑張っていく、その姿にみんなでしっかり声援を送りながらついていこうではありませんか。みなさまのご協力を心からお願いいたします」と来賓挨拶をしました。
記念シンポジウム「どうする日本」 アジアの未来を語る
杉村太蔵氏がファシリテーター 次世代の政治リーダーが登壇
記念シンポジウム「どうする日本」が元衆議院議員でタレントの杉村太蔵氏=写真=がファシリテーターとなり、元環境大臣の小泉進次郎衆議院議員(神奈川11区)、自民党筆頭副幹事長で前総務会長の福田達夫衆議院議員(群馬4区)、自民党農林部会長で前農林水産副大臣の武部新衆議院議員(北海道12区)、前デジタル大臣の牧島かれん衆議院議員(神奈川17区)、自民党デジタル社会推進本部事務局次長の塩崎彰久衆議院議員(愛媛1区)といった次世代の政治リーダーが登壇しました。シンポジウムでは(1)G7広島サミット(2)日本の危機と課題(3)日本の成長とアジアの未来――について杉村氏の進行で登壇議員が意見を述べました。
小泉議員「環境の問題を経済の観点でとらえ新しい経済の時代に入るべき」
小泉進次郎議員=写真=は元環境大臣の立場から「環境の問題はもはや経済の問題だ。その認識をいかに持てるかが世界の中で覇権を握る上で重要である。日本の人口が減る中で、これから内需だけでは富が増えない。世界のマーケットでどこが最も広がる分野なのかと考えるとき、これは脱炭素の分野となる。これから脱炭素、カーボンニュートラルに向かう中で、そこの技術、サービス、さまざまなものを日本の企業や国が握ることができれば、これから長期的に右肩上がりに需要が広がる世界だから、この分野をやらなきゃいけない。今回のG7広島サミットで大きなポイントは、2050年までに海に流れてしまうプラスチック汚染を止める『大阪ブルーオーシャンビジョン』(2019年)が10年前倒しにされたことです。プラスチックもポリエステルも全部もとは石油です。この化石燃料で、日本は年間、約20兆円を海外に対して支払っている。消費税の税収とほぼ同じ額を化石燃料で海外に対して支払っていることになる。この海外への支払いを少しでも減らして、日本の中で富を回していく、そしてより次世代につながる形の経済の形を作っていく。やはり、この環境の問題を経済の観点でとらえることが、新しい経済の時代に入るポイントだと思います」と述べました。
一方、小泉議員は人口減少時代における地方の在り方について「『もうそろそろ人口が増えるっていう幻想から離れませんか』ということは正面から言わなきゃいけないと思います。この前、厚労省の研究所が出した人口の推計は、今から33年後に、日本は1億人を切る。2056年です。私は今42歳ですから、33年後75歳になります。我々の世代がやらなきゃいけないことは、1億人を切る日本でも大丈夫だと思ってもらえる国の形、地方の形を作り上げることです。今、私は全国いろいろ見ていると、どうやったら地元にとどまり続けてくれるかっていう発想があまりに強すぎる。やっぱり日本から出て世界を知って、そしてまた自分の地元に戻りたいという街を我々の時代で作れば、街を出て行っても、最後は戻ってくるのではないか。そんな日本を作ることが大事だと思います」と強調しました。
福田議員「デフレから脱出し給料が上がる期待感をつくることが政治の役割」
福田達夫議員=写真=はデフレと賃上げ政策について「海外はインフレですが、デフレ30年は日本だけです。日本だけの病気で日本だけが苦しんでいる。30年間過ぎてしまった宿痾(しゅくあ)、ここをこのインフレ局面を追い風に使ってでも脱出していく。これが実は政治に求められている一番の課題だと思います。よく耳慣れた言葉で、より良いものをより安くという言葉があります。しかし、より良いものを作ったら評価されたいじゃないですか。給料を高く、というのが資本主義の評価です。より良いものを作ったら、より高く評価されて、その分しっかりと評価された額の給料をいただく。これは資本主義で当たり前のことですが、日本においては価格破壊という言葉もできた。より良いものをより安く提供することが美談になってしまった。結果として何が起きているか。自分が評価されないと思っている人間が非常に多い社会になってしまった。資本主義では給料を上げなかったら自分が評価されないことだと思います。これをやめましょう、ということです。来年4月には地方公務員の非正規の方のいわゆるボーナスを上げます。3000億円を予算化しています。この3000億円は消費傾向が高い方々に配れる。地方に直接出ます。地方経済の回り始めるきっかけができる。その中で、物価は上がっても給料は上がるものなのだという期待感をつくることが、政治がやるべきことではないかと思います」と語りました。
福田議員はアジアとの向き合い方について「日本は多層性の中からさまざまなものが生まれてくる。ここに最大の魅力がある。そういう社会の作り方というものを、日本人がもう一度確認して、それを生かして、まさに多様性のある世界を作っていくことのヒントになると思います。このことをぜひ東南アジアの皆さんとともに、祖父の福田赳夫(元首相)が半世紀前に(「福田ドクトリン」で)、心と心の対話、対等な関係、そして軍事大国にならない、この3つの約束をしています。このことはまだまだ生きていると思います。特に、この対等な関係というのがまさにできるような時期にきている。経済成長した東南アジアの国々が社会成長もしていく。我々も課題を抱えているけれどもその課題について一緒に解決していければと考えています」と述べました。
武部議員「外国人材をパートナーとして受入れ日本のシステムをアジアに」
武部新議員=写真=は食糧安全保障について「食糧に影響が出て、パンがお店に並ばないと、民主主義が危なくなる。要するに、政治体制が悪いという話になります。食料安全保障というのは、民主主義につながっていく大きな問題になっていきます。ですから今回のG7広島サミットではしっかりと農業大国であるウクライナの農業部門の支援をやっていこうということになり、これは素晴らしい前進だと思います」と言及しました。
武部議員は選ばれる国になるための方策について「外国人材を日本がどう受け入れていくかということは、やはり日本に高い技術があるからそれを学んでくださいというスタンスではだめなのだろうと思います。おそらくこれから来ていただいた方々の国も含めて、アジアの繁栄と発展のためにお互いに協力しながらやっていかなきゃいけない。我々は今のところ、まだDX(デジタルトランスフォーメーション)とかカーボンの技術とか、そういったものについては学んでいただける部分は多いけれども、実際にどうアジアで実践していくかということについては、来ていただいた皆さん方と一緒にこれを発展させて、そしてアジアに広めていくということが大事になってくるのだろうと思います。お互いパートナーとしてアジアの発展のために尽くしていく。そのために、日本語も含めて日本のシステムをしっかりと学んでいただき、アジアに広めていくことが、アジアの繁栄プラス安全保障にも資していくことになると思います。そのためには外国の皆様をどう受け入れるか、その国家戦略をしっかり作っていかなければならないと思います」と語りました。
牧島議員「地方こそデジタル人材・グローバル人材を活用してDX推進を」
牧島かれん議員=写真=は前デジタル大臣の立場から「それぞれの自治体で住民向けのサービスをするときにAI(人工知能)を使えば、例えば、最適な保育園を選ぶのに、兄弟がいた場合とか、お仕事をしている時間が何時間だったらとか、これまでは担当の部署の方たちが知恵をひねって、今までの経験を踏まえながらやっていた何十時間の行程が数分でできることも分かってきた。自治体のDXを進めながら住民の皆さん一人一人の個別最適化のサービス提供をいち早く行うというところは今後の可能性としてある。もう一つは製造業に関しても、自民党中小企業DXプロジェクトチームで新潟県燕市に行ってきたのですが、地域全体でサプライチェーンが動いているようでした。きっかけはアジアからの留学生の方が『FAXって何ですか』と聞いた。その一言によって、自分たちのDXが進んでいないことを思い知らされたわけです」と述べました。
さらに牧島議員は「デジタルとかテクノロジーというと、都心部のものだというイメージを持たれる方もまだいるかもしれませんが、あえて申し上げれば、地方にこそデジタルを、地方にこそグローバル化を、と思っています。人口減少、少子高齢社会というのは、地方の大きな課題になっているからこそ、ここをクリアするために多くの方を受け入れる土壌をそれぞれの地域で作っていただいて、そして、テクノロジーで人がやるべきところには人が、そしてテクノロジーで置き換えられるものは置き換えていく。ドローンで物を配送する、自動配送を行う、そういった未来都市をそれぞれ全国各地に作っていけるように、そのためにはデジタル人材やグローバル人材を受け入れていくことが重要です」と指摘しました。
塩崎議員「人手不足対策はAIによる生産性向上と優秀な外国人材の受入れ」
塩崎彰久衆議院議員=写真=は専門の生成AIについて「G7広島サミットでは『AI広島プロセス』が合意された。昨年11月にオープンAI社による誰でもほぼ無料で使える対話型AIサービス(ChatGPT)が発表された。これが世界で革命を起こしているわけですが、今年1月に自民党でAIプロジェクトチームを作って、そして3月末に『AIホワイトペーパー』という政策提言を出した。そこからたった50日で、オープンAI社のサム・アルトマン社長さんに会っていただき、そして自民党の公約になり、なんとG7広島サミットでは国際公約までなってしまった。このスピード感はすごかったなと思います。これからG7の国々で新しい人工知能をどういう風に規制していくのかという議論が始まっていく。どの国もみんなその議論の主導権を握りたいという時に、岸田首相のリーダーシップで事務局を日本に置くということが決まった。これはすごいことです。事務局機能を持つことによって、いろんな国の規制、論議の情報が入ってくるわけです。そこを日本がきちっとコントロールしていくことによって、規制を強化したいヨーロッパと自由にやりたいアメリカのバランスの中で、どうすればこの新しいテクノロジーを日本の経済成長、日本の社会課題の解決に使っていくか、その選択肢が広がったのが今回の広島AIサミットだったと思います」と話しました。
また塩崎議員は「今日私が申し上げたかったことは、これからの日本の経済成長の最大のリスク要因というのは人手不足の問題であろうと。その人手不足に対する対策としては、一つはAIによる生産性の向上、二つ目が優秀な外国の方にたくさん日本に来ていただく、そういうことではないかと思います。AI政策も、外国人材受入れもこれから1、2年くらいが政策的には最も大切な曲がり角になってくるので先輩方を支えて頑張っていきます」と締めくくりました。
質疑応答では、ベトナムの送出し機関であるエスハイ社のレ・ロンソン社長、札幌商工会議所副会頭である道路工業の中田隆博社長から質問や意見が出されました=写真はシンポジウム「どうする日本」に参加した左から武部議員、小泉議員、杉村氏、福田議員、牧島議員、塩崎議員。
武部会長 「地球村時代に生きる気概に燃えて」
和而不同(わして どうぜす)の精神 アジアの安定と日本の持続的成長を願う
最後に武部勤会長=写真=が「日本は戦後、70数年経っても自虐性というか、だめな国という意識がはびこっている。今日のシンポジウムは世界情勢が混迷する中、日本を再び輝く国に変え、選ばれる国になるため、我々は何をなすべきかを小泉進次郎衆議院議員はじめ国会議員の先生方に本音を語ってもらい、会場の皆さまとともに考えてもらうため企画しました。アジアの若者がなぜ、日本にあこがれて来るかというと、それは賃金だけではなく、日本の国柄、日本の精神文化にあると思います。もっと日本の魅力を見直す必要があるのではないか。日本の文化、歴史、伝統を見直すとともに、アジアの国々に対する上から目線を改めなければ、日本は選ばれる国にはなれません。人は働きがい、生きがい、夢や希望の持てるところに、そして安心、安全な街や国に集まってくると思います。そういう魅力をアジアの国々の皆さんは日本に求めているのです。(「東亜総研10年史」の表紙に書いた)『和而不同』(わして どうぜず)は中国の論語ですが、人との関係はそれぞれ主体性を生かし調和してなすべきであり、むやみに付和雷同して付き合うべきではないという意味です。国と国との関係も同様だと思います。その精神を持ちつつ、東亜総研一同、これからの10年、地球村時代に生きる気概に燃えて、世界の平和とアジアの安定、そして日本の持続的成長のために、日々新たに研鑽し、努力してまいりたいと存じます。何とぞ、皆さまの一層のご支援とご協力をお願い申し上げます」と閉会の挨拶をしました。
フォーラムには、船橋利実参議院議員(北海道選挙区)はじめ、内閣官房、農水省、入管庁、文科省、国土交通省、環境省、北海道東京事務所、国際協力機構(JICA)、日本経済団体連合会など省庁や関係機関からも代表者が出席しました。
■東亜総研10年史を発刊
これまで10年の歴史 これから10年の「道しるべ」
東亜総研は設立10周年を記念して「東亜総研10年史」=写真=を発刊しました。
表紙には武部勤会長が自ら揮毫した書「和而不同」(わして どうぜず)が大きく印刷され、写真やビジュアル中心の編集となっています。
冒頭、「地球村時代に生きる気概に燃えて」と題して武部会長の思いが述べられています。続いて、東亜総研の歴史として(1)ベトナム、インドネシア、モンゴルはじめアジア諸国首脳との人脈を礎とした「友好発展の礎を築く」(2)「『アジアを変える、世界に挑む』日越大学開学からの歩み」(3)「グローバル人材共生社会をめざし、技能実習生育成・保護・支援を」(4)「多彩な国際交流を先導」を紹介しています。
さらに、「東亜総研、10年の歩み」、「東亜総研とNAGOMi」、武部会長と田中寧・元JICA理事による特別対談「これまでの10年、これからの10年」が掲載されています。
最後に「東亜総研これからの10年『世界は日本を待っている』」では(1)アジアとの共生に向けたプラットフォームづくりを(2)グローバル人材共生ネットワークを全国各地に(3)日本の国柄や魅力を磨く国民運動を(4)イノベーションと観光立国を車の両輪に(5)人間重視の人材育成・国際交流を――とこれから進むべき東亜総研の「道しるべ」が書かれています。